おひとりさまの終活|将来の不安を和らげる生前できる10のこと

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ずっと独身、あるいは家族との死別・離別で、一人で暮らす高齢者の「おひとりさま」が増えています。2015年に592万人もの高齢者が一人暮らしをされています。さらに、2035年には、東京では高齢者世帯の44%が一人暮らしになるそうです。
こちらが2015年に内閣府が発表した「65歳以上の一人暮らし高齢者の動向」です。2035年には、762万人が一人暮らしの高齢者になります。

内閣府が発表した高齢者の一人暮らしのグラフ

出典元:内閣府 https://www8.cao.go.jp/

2035年には、一人暮らしの4人に一人は女性の高齢者、また、3人に一人は高齢者になります。

ですので、おひとりさまは決して他人事ではありません。今、子供や兄弟・親類が同居、または近くに住まわれていても、仕事で転勤になったり、結婚で別居になることもあって、将来おひとりさまになる可能性は誰にでもあるのです。

そこで、今回は将来の不安を和らげる生前や死後に発生する様々な終活を10のポイントで解説致します。

一人暮らし高齢者5つのの不安

2015年に592万人もの高齢者が一人暮らしをされています。結婚していない方、離婚された方、子どもがいても一人という方も少なくありません。彼らの心配事は健康や病気・介護が必要になったり、死が迫ったりしたらどうなるのかです。募る不安を和らげるには、生前や死後に発生する様々な手続きの段取りが欠かせません。

内閣府が2014年に(平成26年)に実施した「一人暮らし高齢者に関する意識調査」によれば、このようなことに不安を感じられている方が圧倒的に多いそうです。
内閣府が2014年に(平成26年)に実施した「一人暮らし高齢者に関する意識調査」
出典元:内閣府 https://www8.cao.go.jp/
※画像をクリニックすると拡大します。

ご覧のように1位から5位をまとめるとこのようになります。

1位 健康や病気のこと(58.9%)
2位 寝たきりや身体が不自由になり介護が必要な状態になること(42.6%)
3位 自然災害(29.1%)
4位 生活のための収入のこと(18.2%)
5位 頼れる人がいなくなること(13.6%)

老い・病気・死は一人暮らしの人に限らず年をとれば誰もが直面する大きなリスクです。自分のことが自分でできない状況になれば、どんな人も誰かの手を借りなければなりません。

昨今、台風やゲリラ豪雨など自然災害は地球温暖化の影響で大きくなり、家が壊れたり浸水したりと大きな被害をもたらしています。自然災害にあうと家の修理や建て直しなどで予期せぬ費用がかかり、老後の貯えと考えていたお金にも大きな影響をあたえてしまいます。

将来の不安は準備で解消できる

「寝たきりになったらどうしよう」・「介護が必要になったらどうすればいいのだろう」と一人暮らしなら当然、抱く不安です。自力で生活できなくなったとき、誰に、どこで介護をしてもらうかは深刻な問題です。

介護保険法では、要支援や要介護がその健康状態から介護度が細かく定められており、要介護度が進めば施設や病院に移るか、家族が居れば同居をするかなどの選択を迫られます。四六時中の介護が必要でない場合は、買い物や洗濯・掃除など生活をしていくうえでの援助を依頼することで一人暮らしは続けることができます。

では、一人で生活することができないほど要介護度が進んだらどうすれば良いのでしょうか。

それは、元気なうちに情報を集め準備しておけば、いざとなっても安心です。介護になったらどうしようと思う前に、介護が必要になっても安心できる準備を元気なうちにしておけばいいのです。

 

ちなみに、一人暮らをするためにはこの4つの自立が必要と言われています。
 身体的自立
 経済的自立
 生活的自立
 精神的自立

身体的自立とは、歩いたり。着替えたり食事をしたりする動作がほかの人の助けを借りずに自力でできるかどうかです。身体的に自立できなければ介助や介護が必要になります。普段から足腰を鍛えたり、脳トレをしたりして老化を遅らせることが大切です。

経済的自立とは、年金や貯金で生活をすることができるかどうかということです。現在の高齢者が経済的自立ができている割合は決して高くはありません。というのも、2011年度(平成23年度)の生活保護受給者全体のうち、65歳以上が占める割合は4割近くにものぼります。
厚生労働省 生活保護受給者
出典元:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
※画像をクリニックすると拡大します。

しかも!総務省の2017年(平成29年)の家計調査によると、無職で60歳以上の一人暮らし家庭では、毎月の支出は、平均で14.8万円、それに対して年金などの収入は11万程度なので、毎月約4万円も貯金から切り崩している計算になります。

夫婦2人暮らしの高齢者世帯でも平均で月に6万円以上も赤字なので、一人であろうが誰かと暮らしていようが老後年金だけでは生活ができず、基本的には家計が赤字になるという覚悟が必要になります。

総務省の2017年(平成29年)の家計調査
出典元:http://www.stat.go.jp/

生活的自立とは、掃除や洗濯・料理など身の回りのことが自分でできることをいいます。特に、男性は仕事に専念し、家事は嫁にまかせていたためできないという方が少なくありません。また、独身の方でも外食や弁当などの食事が多かったため料理ができない方も多くおられます。

精神的自立とは、自分のことは自分の考えで行動ができるかをいいます。自分の意思で物事を判断し、他人に流されることなく、自らの責任で行動できる能力のことです。この先、治療や介護などで様々な判断が必要になってきます。最後まで自分らしく生きるためには、精神的自立が求められるのです。

 

将来の不安を和らげる生前できる10のこと

健康寿命とは、自立した生活を送れる期間のことで、2013年(平成25年)厚生労働省の発表によると、男性が71.19歳、女性が74.21歳です。男性の平均寿命が80.21歳、女性の平均寿命が86.61歳ですから平均で9年から12年も短いことになります。もっと分かりやすくいいますと、9年から12年は誰かしらの介護が必要になるということです。

そんな将来の不安を和らげるためにも心と身体が健康なうちに終活を始めておきましょう。
そこで、将来の不安を和らげる生前できる10のことをご紹介致します。

1. かかりつけ医を見つける
2. 終末医療をどうするのか答えを出しておく
3. 一人暮らしを続ける工夫
4. 身体の衰え・判断力の低下に備える住み替え
5. 身体の自由がきかなくなったときの備え
6. 異変に気付いてもらうためのセーフティーネット
7. 要介護になったらどうするのか
8. 死後にやらなくてはいけないこと
9. 自分の意思を誰に託すか
10. 意思の残し方

では、それら10の項目について詳しくご説明を致します。

1. かかりつけ医を見つける

終活おひとりさま かかりつけ医を見つける

かかりつけ医とは、日常の健康管理からちょっとした体の不調を気軽に相談できる医師のことを言います。普段から診てもらうことで体調や身体の変化を把握しており、どの診療所を受診すればよいのか適切なアドバイスをしてくれます。また、かかりつけ医は、病状だけではなく、これまでの病歴や健康状態をすべて把握しています。しかも!かかりつけ医は専門病院と連携しているので重篤な病気や手術が必要なときには、すぐに紹介状を書いてもらえます。

かかりつけ医は、自宅の近所で見つけることが一番大切です。急に気分が悪くなったり病気になったときに、すぐに行けるという利便性が安心感につながります。また、「話しやすい」・「説明が分かりやすい」というのも良いかかりつけ医の条件です。

 

2. 終末医療をどうするのか答えを出しておく

終活おひとりさま  終末医療をどうするのか答えを出しておく

今や約8割の人が病院で亡くなる時代です。ですので、「病状・余命の告知を誰と受けるのか」・「延命措置か尊厳死か」・「蘇生措置を望むか望まないか」など終末医療をどうするのか答えを出しておく必要があります。

まず、直面するのが、病状や余命の告知です。命に係わる告知は、想像以上に大きな精神的ショックを与えます。頭が真っ白になって、医師の話しを聞けなくなってしまう方もおられます。そのため家族や親せきの方に同席をしてもらい今後の治療について医師からしっかり話しを聞くためにも同席が必要になります。家族や親せきがいない方は、友人を見つけておきましょう。友人がおられない方は、看護師や医療ソーシャルワーカーに相談をしてみましょう。医療ソーシャルワーカーとは、患者やその家族・遺族に対して社会生活で困っていることや悩みの相談を受けるアドバイザーです。病院のなかの「相談支援センター」・「患者総合支援センター」・「医療相談室」・「地域連携室」といった部署におり、相談は無料です。

また、ほとんどの人は亡くなる直前に延命措置をどうするかと言う問題に直面します。
厚生労働省が2008年(平成20年)に行った調査では、自分が治る見込みがなく死期が迫っている場合、7割の人は延命措置を望んでいませんでした。
ちなみに、延命措置とは、一般的には治癒の見込みがなく死期が迫っている患者に対し、治すことを目的とするのではなく延命を図ることだけを目的として行う医療を言います。

延命措置を望まない場合は、事前にその意思を周りの人や医師に伝えておかなければいけません。延命措置をしてほしくないと思っていても延命措置が必要になるときには、すでに意識はなくなっているのでその場になって自分では伝えることができないからです。

延命だけを目的とした医療を本人の意思で拒否するというのが「尊厳死」です。厚生労働省は2007年(平成19年)に発表した「終末期医療の決定プロセスに関する指針」と言うガイドラインの中で、延命医療をどうするかを含めた終末期医療について、「医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされた上での患者本人による決定を基本とする」としています。

尊厳死を意思表示したものが「尊厳死宣言書」になります。この「尊厳死宣言書」は大学病院医療情報ネットワークからダウンロードすることができます。

ただし、書き示すだけでは法的拘束力はありません。 その場合、「尊厳死宣言公正証書」と言うものを作成します。 費用は、手数料¥11,000円前後からで作ることができますので、お住まいの公証役場にお問い合わせ下さい。

ただし、書き示すだけでは法的拘束力はありません。
その場合、「尊厳死宣言公正証書」と言うものを作成します。
費用は、手数料¥11,000円前後からで作ることができますので、お住まいの公証役場にお問い合わせ下さい。

心肺停止・呼吸停止に陥ったとき患者を生かすための行為を蘇生措置といいます。街中で突発的に倒れて心肺が停止したのではなく、病気がだんだん悪化して、臨終状態になった場合、心臓マッサージ・人工呼吸器の装着などの処置が施されることは珍しくありません。しかし、最近の尊厳死の広まりもあり蘇生措置を受けたくないという方もおられます。この蘇生措置を望まない場合もあらかじめ意思表示をしておく必要があります。

このように終末医療についてどうしたいのかを答えを出しておきましょう。その答えは、医師をはじめ、家族・親戚・友人などに伝え、「尊厳死宣言書」のように文書として残しておくことが大切です。

 

3.一人暮らしを続ける工夫

一人暮らしを続ける工夫

将来、病気になったり、身体が不自由になったりすることを不安に感じられている高齢者はたくさんおられます。排出や入浴・立ち上がったり、着替えを自分でできない状態になれば一人で生活するのは難しくなります。そこまでの状態でなければ、調理・掃除・洗濯などの家事の「生活援助」を上手に利用することで一人暮らしを継続するできます。

訪問介護では、訪問介護員(ホームヘルパー)が高齢者宅を訪れて介護サービスを行います。それを利用すれば、食事や排泄、入浴などの介助を行う「身体介護」だけでなく、掃除や洗濯、食事の準備などの家事を手助けしてくれる「生活援助」も受けられます。「生活援助」が受けられるのは、ひとり暮らしの高齢者だけではありません。
こしたサービスを受けるためには、まずはケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成します。そのプランに基づいて、居宅介護支援事業所からホームヘルパーが派遣されることになります。
「要介護1~5」の判定を受けている人なら、どんな生活援助のメニューを頼んでも自己負担額は「20分以上45分未満」で約200円、「45分以上」で約250円です。初回利用や早朝・夜間・緊急時などには追加料金がかかります。また、事業所や派遣される地域によっても多少の差があります。
「要支援1、2」の判定を受けている人なら、週1回程度の利用で月額約1300円、週2回程度で約2600円、週3回以上で約4100円が目安となります。

また、補助金を活用して自宅をバリアフリー化することで、足腰が弱っても、自宅により長く住み続けることができます。たとえば、何十年も経った家であればいまだに和式トイレを使っている人も少なくありません。しかし、和式トイレは足腰に負担がかかり、転倒につながる可能性が高いので、洋式トイレへ改修するのがオススメ。また、トイレ・階段・壁などに手すりを取り付ければ、座ったり、立ち上がったりする際にバランスを崩す心配がありません。

介護保険には、「高齢者住宅改修費用助成制度」があり「要支援・要介護」と認定されている人が住んでいる住宅であれば、一生涯20万円までの工事費用の9割(最大18万円)が支給されます。助成となる住宅改修は、手すり・段差の解消・滑りの防止・引き戸等への扉の取替えなど制限がありますが一人暮らしを続ける手助けとなります。

 

4.身体の衰え判断力の低下に備える住み替え

老人ホーム

年をとれば誰でも体の自由がきかなくなり生活するにも人の助けが必要になります。そうしたことを考え終の住みかとして安心できる住まいに移ることも元気なうちに検討しておきたい事柄です。
その手段にはこのような手段があります。
 子供の近くに引っ越す
 高齢者向けシェアハウスに住む
 シニア向け分譲マンション
 高齢者向け賃貸住宅
 サービス付き高齢者向け住宅

では、それぞれについて説明を致しますね。

地方に住む高齢の親を子供が住んでいる都市部に呼び寄せると言ういわゆる「呼び寄せ同居」の傾向は1990年代以降高くなっています。また、子供がUターンして親と同居するケースもあります。2010年(平成22年)の国税調査によれば5年前とは別の場所に居住している人は、85歳以上では、19.7%もおり、5人に1人は5年間で最低1回は転居をしている計算となります。特に85歳以上の女性の移動率は22.0%と男性の13.8%に比べて高いこともわかっています。これは、夫に先立たれ女性が一人暮らしをしているためだと考えられます。

しかし、呼び寄せ同居には問題もあります。健康なうちに転居するならまだしも健康状態が悪くなってからの新しい環境は、高齢者にとって大きなストレスとなります。呼び寄せる子供側も60台位になっていれば両親の介護は肉体的に大変です。離れていれば仲良くできても一緒に暮らすとささいなことで言い合いになったり、悪口になったりすることもあります。嫁姑問題も起きやすいようです。ですので、身体の自由がきく心と体が健康なうちに同居するのが望ましいんです。

高齢者向けシェアハウスは、複数人で1軒の家に住み共同生活をおくる住居です。家の各部屋が入居者のプライベートスペースで、トイレ・キッチン・風呂はほかの居住者と共有します。月々の諸費用が有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅より安く、一般のマンションやアパートより割安な料金で利用することができます。高齢者向けシェアハウスでは、一般的なシェアハウスとの違いは、階段に手すりが付いていたり、段差をなくすためにスロープがつけられているなど、高齢者向けの設備が充実しているのが特徴です。また、居間やキッチンなど共有部が多いシェアハウスでは、同居している人々と顔を合わせる機会が多くなり入居者同士で安否の確認や支え合いができるのも特徴です。

現在、自治体でも公営住宅を利用して高齢者向けシェアハウスとして貸し出し、家賃3万円で利用できるようになってきています。民間でも高齢者向けシェアハウスは増えており、家賃が4万円程度から借りられる物件が多いようです。

シニア向け分譲マンションは、主に自立・満50歳以上で介護を必要としないなどの条件をもうけ受け入れています。食事の提供や緊急時の対応などのサービス、フィットネス・レクリエーションの施設が充実しているので、高齢者が安心して楽しく暮らせます。また、分譲形式なので物件を売却・相続・賃貸することが可能です。ただし、介護が必要な場合は外部サービスを利用するため、重度の要介護状態の対応は難しい場合もあり、状態によっては退去となることもあります。こうしたシニア向け分譲マンションは数千万円から購入でき、購入後は通常のマンションと同様に、月々の管理費や修繕積立金もかかります。また、月々の施設利用料や食事も必要になります。

高齢者向け賃貸住宅は、バリアフリー・緊急通報システムが完備された住宅です。トイレ・浴室・キッチン完備の居室などもあり、自宅のように悠々自適に生活することができます。入居費用を抑えつつ、いざという時にも安心して暮らせる“老後の住まい”として注目を集めています。東京都内の場合、年収が256万円8千円以下という所得制限もありますが、都内に3年以上入居し、65歳以上で配偶者がおらず、一人暮らしをしている方は、単身向けの「シルバーピア」に入居できます。家賃も1万円代からと、かなり安い料金で使用をすることができます。

サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の生活を支援するサービスの付いたバリアフリー住宅です。高齢者向け賃貸住宅と違う点は、医療・介護の有資格者が常駐し、安否確認と生活相談サービスを提供しています。一般的なサービス付き高齢者向け住宅(一般型)と厚生労働省の定める「特定施設」の指定を受けている介護型の2つのタイプがあります。日中は生活相談員が常駐し、入居者の医療・介護・生活相談・安否確認など様々な生活支援サービスを受けることができます。

 

5.身体の自由がきかなくなったときの備え

終活 お金とモノ

長期入院のため、その間、預貯金の出し入れなどの管理ができない、また、銀行・郵便局などが遠いため、高齢で出歩くことが難しいなど、おひとりさまの場合は、身体の自由がきかなくなったときの備えをしておかなければなりません。安心してお願いできる友人・知人がいれば問題ありませんが、年を取るとともにだんだん友人・知人も少なくなってきます。

判断能力が十分にあるにもかかわらず、身体が思うように動かず、財産管理など、日頃何気なくやってきたことが年とともにできなくなってきます。そういった高齢者の何かしら困っていることに関して、その部分をお願いすることによって解消する契約を、「任意代理契約(生前事務委任契約)」と言います。

任意後見や法定後見と任意代理契約(生前事務委任契約)との違いは、任意後見や法定後見は、判断能力が衰えて初めてスタートしますが、判断能力が衰える前から、財産管理などをお願いしたい場合に利用する制度が「生前事務委任契約(任意代理契約)」です。また、任意後見契約は、公正証書で契約を結ぶ必要がありますが、生前事務委任契約は公正証書に行かなくても結ぶことができます。しかし、生前事務委任契約や任意後見契約を結ぶ時期は、支援される人に判断能力があるうちに結ぶ必要があります。判断能力が衰えてしまうと、どちらも結ぶことができなくなります。

必ずしも生前事務委任契約と任意後見契約を同時に結ぶ必要はありませんが、任意後見契約を公証役場で結ぶときに生前事務委任契約とセットで結ぶことをおススメします。なぜなら、生前事務委任契約と任意後見契約を同時に結ぶことにより、支援される人に判断能力がある間は、生前事務委任契約により支援をしてもらい、判断能力が衰えてしまったあとは、任意後見契約で支援してもらうというスムーズな流れを作ることができるからです。

任意代理契約(生前事務委任契約)では、断能力はあっても複雑な手続きや重要書類の管理を自分だけで行うことに自信が持てない場合や、権利証・通帳・印鑑・クレジットカードだけでなくマイナンバーの通知のように重要な書類が役所や銀行などから届いてもなくさないように保管もしてもらえます。また、年金の受取り・光熱費・家賃・医療費の支払い等を代理でしてもらうことができます。

また、治癒の見込みがなく死が避けられない場合には延命処置措置を医療に関する意思を代理で医師に伝えてもらうことも可能です。その他、賃貸住宅・老人ホームの契約・入院するときの身元引き受けの保証もしてくれます。

 

6.異変に気付いてもらうためのセーフティーネット

異変に気付いてもらうためのセーフティーネット

一人暮らしの高齢者は外部と接触することや人と会話をする機会が少なくなります。そのため認知症が進んだりすることがあります。また、昨今、孤独死が問題になっていますが、その件数は年々増え、1年間に3万人もの人が誰にも看取られることなく死を迎えています。
そこで、認知症などの判断能力の低下や健康状態の異変を気付いてもらうためのセーフティーネットを健康なうちから準備しておきましょう。

また、任意後見契約は、判断能力が低下してきたことを身内や任意後見受任者に気づいてもらい、家庭裁判所に申し立ててもらわなければせっかく備えていても効力を発揮しません。支援してくれる人と任意後見約を結んだ時には判断能力がありますが、実際に任意後見が始まるのは本人の判断能力が低下してからです。
ましてや家族がいない人や家族がいたとしても疎遠だったり、遠方で頻繁に会わなかったりする場合には、本人の状態を把握する人がいない可能性があります。
ですので、任意後見契約を結ぶときには見守り契約も同時にしておくことがより安心につながります。
見守り契約とは、任意後見受任者と毎月または数ヶ月に1度など定期的に面会したり、電話連絡をしたりして、健康状態や生活状況を確認してもらう契約です。
絶対に必要な契約では無いかもしれませんが、日々顔を合わせていなければ自分の判断能力が低下したかどうかはわかりません。頻繁に顔を合わせる身近な人が任意後見受任者である場合以外は見守り契約はあったほうが良いでしょう。

日常生活の見守りや安否確認だけであれば既存のサービスが利用できます。日々のガスや電気の使われ方から生活パターンを確認し、異常があれば離れて住む家族等に連絡してくれるサービスのほか、トイレや寝室、冷蔵庫などのドアに設置した安否確認センサーで長時間開閉がないことを確認すると、登録した電話番号に警告アナウンスを発信してくれたり、自宅内で一定時間動きがない時に警備員が駆けつけてくれたりなど、昨今ではさまざまな会社が見守りや安否確認サービスを行っています。これらのサービスを利用することで異変に気づき、万が一、倒れたとしても駆けつけ孤独死などの最悪の事態を防ぐこともできます。

 

7.要介護になったらどうするのか

要介護になったらどうするのか

おひとりさまに限らず、要介護になったらどうするのかも考えておくことをオススメ致します。また、必要の応じて見学をして、準備を進めることも必要です。高齢になればなるほど、身体の自由がきかなくなり、判断力も衰えてきます。体力が衰えてくると、排泄・着替え・入浴ができなくなり誰かのサポートなしでは生活をおくることができなくなります。

また、認知症が進行すると日常生活や社会生活を自力で営みに営みにくくなるだけでなく、暴言や暴力を振ったり、徘徊して行方不明になったり妄想で大騒ぎしたりすることがあります。

認知症患者は高齢者全体で見れば15%程度ですが、高齢になればなるほど認知症にかかる可能性は高くなります。厚生労働省の資料によれば60歳後半で認知症を患っている人は1.5%ですが、85歳以上では27%に達するそうです。85歳以上になると、4人に1人は認知症を発症していることになります。今後常習者の増加に伴って2020年には認知症患者は3,250,000人まで増加すると見込まれています。

そのような要介護になった場合には、このような施設を利用することで介護を受けることができます。
 介護付き共同生活グループホーム
 特別養護老人ホーム
 デイサービスと訪問介護

グループホームとは、認知症の高齢者が食事や入浴排泄などの介護サービスを受けながら、少人数(1ユニット5人から9人、最大で2ユニット18人まで)で共同生活する住まいを言います。介護保険制度では、地域密着型サービスに分類されているため、入居希望者の住民票登録がある市区町村の施設しか利用できません。

グループホームに入居するには、65歳以上、要支援2または要介護1以上の認知症患者である必要があります。また、地域密着型サービスであることから、施設と同一地域内の住居と住民票があることが求められます。

入居の際にかかる費用は、入居一時金と、保証金などと呼ばれる初期費用、それに月額費用が一般的です。公的な基準はなく、施設によって0円~数百万円と大きな差があります。多くのグループホームでは100万円くらいまでが一般的です。いわゆる敷金のようなものなので、退去するときに返金されますが、入居期間によって償却されるしくみを取り入れている施設などもあり、実際には目減りすることがあります。

入居後の月額費用も施設によって異なりますが、介護サービス料に加えて、自己負担分の家賃・光熱費・食費などがかかります。少なく見積もっても、地方や郊外では月額10万円~15万円程度、都会では月額15万円~30万円程度が目安になります。そのほかにも、おむつ代や散髪代・新聞・雑誌代などは別途負担することになります。

特別養護老人ホームは、在宅での生活が困難になった要介護3以上(特例の要介護1・2)の高齢者が入居できる公的な「介護保険施設」の1つです。原則として終身に渡って介護が受けられます。別名「特養」とも呼ばれています。民間運営の有料老人ホーム等に比べ低料金であるため、入居待機者が多く、入居まで数ヶ月から数年も待つことがあります。月額費用は、約3万~15万円で一時金は不要です。

そのほかにも介護を受けられる施設には、サービス付き高齢者向け住宅・住宅型有料老人ホームがあります。

住み慣れた我が家で最後までどうしても過ごしたいという方もおられると思います。誰にも気兼ねなく自由に暮らすことができるので、さきほどご紹介をしたグループホームや特別養護老人ホームなどには入りたくないという方も少なくないと思います。そんな方には、デイサービスや訪問介護がオススメです。

訪問介護とは、介護福祉士やホームヘルパーなどの専門家に自宅に来てもらい、食事や入浴・排泄・衣類の着替えといった日常生活の介助や料理・洗濯・買い物などの生活援助をしてもらうサービスです。ただし、要介護認定されていないと訪問介護サービスを利用する際に介護保険が適用されないので、全額自己負担となり、かなり高額になってしまいます。

こちらが訪問介護の自己負担額です。地域によっては多少の違いはありますがご参考にして下さい。

  介助時間 自己負担額(1回あたり)
身体介助 20分未満 165円
20~30分未満 248円
30~60分未満 394円
60~90分未満 575円
以降30分経過ごと 83円
生活援助 20~45分未満 181円
45分以上 223円
通院時の乗車・降車等介助 片道 98円

※1割負担の費用です。一定以上の所得のある「第1号被保険者」は、自己負担額の割合が2割となります。
※出典元:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp

また、デイサービスとは、専門スタッフが食事や介護サービスをしてくれる施設に出向き、介助を受けるサービスです。簡単な体操やゲームもあり、認知症や運動機能の改善・予防をすることができます。

こちらがデイサービスを利用時の自己負担額です。参考にして下さい。

介護度 7時間以上8時間未満 8時間以上9時間未満
要介護1 645円 656円
要介護2 761円 775円
要介護3 883円 898円
要介護4 1003円 1021円
要介護5 1124円 1144円

※1割負担の費用です。一定以上の所得のある「第1号被保険者」は、自己負担額の割合が2割となります。
※出典元:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp

 

8.死後にやらなくてはいけないこと

人が亡くなった後、何をしなければいけないかご存知でしょうか。まっさきに思いつくのが葬式です。葬儀は「葬送儀礼」の略で、人間が生から死へ移行する重要な通過儀礼であり、本来は臨終の「看取り」・「死後の遺体処理」・「葬儀式」・「服喪墓参」の一連の儀式をいいます。

儀式以外にも事務的な処理や社会的な処理が発生します。たとえば、「死亡届け」を役所に提出し、死後の事実を社会に告知するといった手続きです。また、遺体を衛生的に処理するための火葬や土葬の遺体の処理も発生します。

人が亡くなった場合、戸籍法第86条ではこのように定められています。

(1) 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡があったときは、その事実を知った日から3箇月以内)に、これをしなければならない。
(2) 届出には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
(3) やむを得ない事由によって診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届出に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。
1. 死亡の年月日時分及び場所
2. その他命令で定める事項

死亡届を提出しなければならない届出義務者はこのようになります。
第1 同居の親族
第2 その他の同居者
第3 家主・地主又は家屋若しくは土地の管理人
また、同居していない親族・後見人・保佐人・補助人・任意後見人も届け出をすることができます。

おひとりさまの場合は同居人がいませんから、死亡届を出す人は、家主・地主又は家屋若しくは土地の管理人・同居していない親族・後見人・保佐人・補助人・任意後見人になります。また、病院でなくなった際、死亡届を出す人がいない場合に限り、病院長が出すこともあります。ちなみに、非同居の子供に死亡届を出す義務はありません。

死亡届の提出時に必要となるのが死亡診断書です。死亡診断書は、死亡届の右面になっており、これがなければ死亡届は受理されません。病院でなくなった場合は、病院で死亡診断書を書いてくれますが、心臓発作などで突然、自宅で倒れ亡くなった場合は、遺体を発見した人が警察に連絡します。かかりつけ医がいる場合は、その医師が呼ばれ、死亡診断書を書いてくれますが、いない場合は警察指定の監察医が死因を特定します。その結果、異状死と診断されば場合は解剖し死因を特定することになります。ちなみに、異状死とは、変死・犯罪死・災害死・自殺などです。お風呂で亡くなった、朝ベットの中で亡くなっていたなども異状死になります。

どんな亡くなりかたになるかは分かりませんが、突然亡くなったことを考えると近所にかかりつけ医を見つけておくことが大切です。おひとりさまは、そのかかりつけ医の連絡先の書いた紙を分かりやすいところに貼っておくことをオススメ致します。

遺体の処理は、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」第3条で、特定疾患や感染症が原因で死亡したなどの例外をはぶき死後24時間以内の埋葬または火葬が禁止されています。また、埋葬や火葬には、市区町村の許可が必要になります。通常は、「死亡届」を提出する人が一緒に「火葬許可証申請書」を役所に提出すれば、「火葬許可証」が交付されます。火葬場で「火葬許可証」に必要事項を記入してもらえば、「埋葬許可証」となります。この「埋葬許可証」がなければ、納骨することができません。

このように、葬式・死亡届・死亡診断書・火葬・埋葬など死後にやらなくてはいけないことがあります。葬式を執り行うのか、行わないのか、執り行う場合は、どの葬儀社にお願いをするのかを決め、生前契約をされると良いでしょう。お葬式を行わないとしても遺体をどこに保管するのかも考えておかなければなりません。死後24時間は火葬も埋葬も法律上できないからです。また。死亡届・死亡診断書・火葬・埋葬の許可を誰に託するのかも考えておかなければなりません。おひとりさまの場合は、家族・親族が居ない場合がありますので、後見人・保佐人・補助人・任意後見人ともよく話しをしておく必要があります。

そのほかにも、お墓をどうするのかという切実な問題もあります。現在、お墓のありかたもさまざまな形になってきております。たとえば、ひと昔なら考えられなかった宇宙葬や散骨、また、気の合う仲間たちとの共同墓地など大きくお墓も様変わりしています。死後、お墓をどうしてほしいのかも元気なうちから決めておく必要もあります。

死後にやらなくてはいけないことをまとめるとこのような事柄になります。
 葬式
 死亡届・死亡診断書・火葬・埋葬の許可の記入と提出
 お墓
 遺品・財産などの相続

 

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9.自分の意思を誰に託すか決める

平成24(2012)年の認知症高齢者数が462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)が認知症を患っています。また、2025年には、約5人に1人は認知症になると予想されています。
こちらは、内閣府が発表している「平成29年版高齢社会白書(概要版)」の「認知症高齢者数の推計」です。
内閣府平成29年版高齢社会白書(概要版)より認知症高齢者数の推計を引用
出典元:内閣府 https://www8.cao.go.jp

このように認知症患者の人数は右肩上がりで増え、2050年には1000万人を超えると予想されています。
認知症が進行すると、自分の状況を理解したり、物事を判断したりする能力が衰えます。意思能力がjない状態では、日常生活を自力で送ることは難しくなります。

たとえば、自分の財産の管理ができなくなったり、買い物・洗濯・炊事なども困難になります。また、認知症高齢者は、詐欺や悪質な訪問販売に巻き込まれやすく、年々その件数は増えています。家族がまわりにいれば、異変やトラブルに気づくかもしれませんが、一人暮らしをしていると誰にも気付いてもらえず、被害が拡大して大変な事態になってしまうこともあるようです。そもそも、このような認知症高齢者は、被害にあっていることすら気付いていないこともあります。

さきほども申し上げましたが、認知症高齢者は自分の財産の管理ができなくなったり、買い物・洗濯・炊事など日常生活を続けることが難しくなってきます。さらに深刻なのが、病院で診察を受けようとしても医師に症状をうまく伝えられない、意思疎通ができないと言う問題も生じてきます。一人暮らしで付き添いもなければ、状況はいっそう困難になります。さらに、入院するにも入院証書に記入したり、様々な書類にサインしなければなりません。介護保険を利用したくてもその手続きをすることもできないうえ、介護を受けるための介護サービス提供契約の締結もできない可能性があります。認知症を患うと様々な場面で自分のことができなくなる事態が起こるのです。

このような不安に対処するには任意後見人制度のご利用をお勧めします。任意後見人制度とは自分の判断能力が低下した場合に、自分の代わりに財産管理や様々な手続きをしてもらえるよう特定の人に任務を引き受けてもらう契約を法的に結ぶ制度をいいます。ただし、任意後見人は本人にしっかりとした判断能力がある間に契約しなければならない点に注意が必要です。

また、せっかく任意後見人の契約をしても最後まで判断能力が衰えることなく結局使わずじまいになることもあります。任意後見人はあくまでも認知症にかかるなどして、判断能力が低下した場合の備えなので、認知症にかからなければ結果的には、契約にかかった費用や時間が無駄になったと言うことになります。しかし、備えが無駄になったと言う事は最後まで判断能力があったと言うことなので喜ぶことでもあります。

任意後見人とよく似た制度に、「法定後見制度(ほうていこうけんせいど)」・任意代理契約があります。任意後見人と法定後見制度・任意代理契約の違いはこのように違います。

  任意後見人 法定後見人 任意代理契約
本人の思い 本人の意思に従う 本人の意思とは関係なく進められる 本人の意思に従う
公正証書 必ず公正証書 不要、家庭裁判所が決定する 公正証書でなくても可
支援者を監督する人 家庭裁判所が選任 家庭裁判所が決定する つかない
本人の判断能力 契約時は必要、実際の開始は低下してから すでに判断能力が無い、欠如している 必要
身体障害者 不可 不可
精神障害・知的障害 不可
報酬額 自由に決めることができる 家庭裁判所が決定する 月額2万円~5万円
監督人の選任 家庭裁判所が決定する(任意後見監督人) 家庭裁判所が決定する(成年後見監督人) 必要ではない
監督人の報酬額 家庭裁判所が決定する 家庭裁判所が決定する

 

法定後見人への報酬額の相場もご紹介致します。
・1,000万以下 月額2万円
・1,000万円~5,000万円以下 月額3万円~4万円
・5,000万円~ 月額5万円~6万円
※付加報酬が加算されることもあります。付加報酬とは、身上監護などに特別困難な事情があったケースに追加される報酬のことで、上記、基本報酬額の50パーセントの範囲内で裁判所が事案ごとに決定します。

任意後見人の報酬は、本人と任意後見人との間で自由に決めることができます。このときに注意しなければならないのが、任意後見人だけでなく任意後見監督人にも報酬を支払う必要がある、という点です。弁護士や司法書士などの専門家に任意後見人を依頼したようなときには、月額3万円~5万円程度で設定されることが多いようです。そのほかにも初期費用として数十万円から20万円必要となります。また、任意後見監督人が選任されるのは、本人や任意後見人などが家庭裁判所に任意後見監督人選任を申し立てた場合です。このときに選ばれる任意後見監督人の報酬は、任意後見監督人から報酬付与の申立てにより、家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払われることになります。

任意後見人の選任には、一般的にこのような方々があげられます。
1.配偶者・親族・友人
2.弁護士や司法書士等法律の専門家
3.社会福祉士などの福祉の専門家
4.生前契約を請け負うNPO社会福祉協議会など

ただ、ここ数年、法定後見人・任意後見人による横領・着服事件が相次ぎ社会的な問題になりました。少し前まではそうした不正を働く後継人の9割が親族だったため身内ならではの甘えや犯罪意識の希薄さが指摘され以後、弁護士や司法書士などの専門家が多く選任されるようになりました。が、今度は弁護士ら専門家の横領事件が続発したのです。人は肩書きだけでは信用できないと言うことであり、他人の財産を動かせる立場になると言うのはそれだけ誘惑が多いので任意後見人を選任する場合は信頼できる人を選ぶようにしましょう。

 

10.意思の残し方

この先、間違いなく、程度の差こそあれ多くの人は病に倒れ、死を迎えます。その時々でどうしてほしいかを周りの人に伝えることができれば良いのですが、そうではない場合もあります。そのためにはどうしてほしいのかをあらかじめ書いておくことをお勧めします。

そこでお勧めするのが、「エンディングノート」と「遺言書」です。

エンディングノートは、自分が病気で寝込んだりしたときに、どんなふうに介護や看護を受けたいのか、どんな終末医療を受けたいのか、あるいは亡くなった後にどんなお葬式をして欲しいのか、品整理をどうしてほしいのか、死んだことをどこに知らせて欲しいかといった多岐に渡る事柄が、このエンディングノートを利用して自分の考えをまとめることができます。

その中で既に準備が終わらせたものがあれば、依頼した内容や相手の連絡先などをわかるように明記しておきましょう。エンディングノートは法的な効力がある遺言書とは異なりますので、形式や形にはこだわりません。気軽に自分の意思を残せるエンディングノートの利点だといえます。ただし一人暮らしの場合、エンディングノートの存在を明確にしておくことが必要です。

一方、遺言とは自分の死によって効力が発生する生前の意思表示のことです。遺言を作成しておくことにより,相続財産の承継について,被相続人ご自身の意思を反映させることが可能となります。ただし,法律で定められた方式で作成されたものでなければ法的効果を生じません。法律で定められた遺言の方式としては,「自筆証書遺言」・「秘密証書遺言」・「公正証書遺言」などがあります。

自筆証書遺言は、民法968条1項でこのように定められています。

第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

ですので、遺言者が自筆で遺言書の全文を作成すること、遺言者が作成した遺言書に作成日付と遺言者の氏名を自書すること、遺言書に遺言者が押印することが必要になります。

秘密証書遺言は、民法970条1項でこのように定められています。

第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
2 968条第2項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

[参照条文]
(自筆証書遺言)
第968条2項 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

また、公正証書遺言は、民法969条でこのように定められています。

第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。